白石英行 講演会

白石英行を知る大企業で活躍する若きリーダーが新年のご挨拶!!

M&C Saatchi マネジングパートナー及び三井金属アクト取締役
(前フォルクワーゲングループJAPAN社長・日本自動車輸入組合理事長)
                          梅野 勉

於)東京ドームホテル 平成24年1月11日

「日本のブランディング」

皆様今晩は! 明けましておめでとうございます。 白石先生とは小中学校の同窓生ということで、私の地元マンション建築時の環境保全運動で大変お世話にもなり、こうしたハレの場にお呼びいただいて誠に光栄に存じます。  

さて私はご紹介いただきましたように四半世紀ホンダで、そしてそれからの10年近くをドイツフォルクスワーゲングループ本社のトップマネジメントの一員として、また日本の法人の社長としてやって参りました、いわゆるカーガイ、クルマ屋であります。 ホンダでは30年以上前に米国に駐在、日本メーカーの先がけであった米国四輪工場立ち上げに参画、そして自らの発案で米国市場初といわれる新しいブランド、第二販売網を創設、工場の増設を企画しました。 これはアキュラというブランドで、その後の日産のインフィニティやトヨタのレクサスはこれをマネたものです。こうして日本の自動車産業の海外進出、国際化の先兵となった後、 今度は外国ブランドをかついで日本市場でドイツ車を売り、更に業界の長の立場で日本市場の真の国際化いわば内なる国際化を目指し、霞が関にも税制、規制などの改革を様々働きかけ成果をあげました。 こうした経験から日本を内と外から見る機会を沢山持ってきましたが、一言で何をしてきたかというと「ブランド作り」をやって参りました。 さて、ブランドとは何でしょうか?  それは受け手、お客様にとっては商品やサービスを通して、ユニークな価値を感じる総合的なふれあいや所有体験であります。またブランドの提供側からみると、相手やお客様に対するコミットメント、お約束するものの総和です。 もっとくだけて言うと、その名前だけでお金になる価値です。 今日はそんなブランド作りといった観点から今の日本に期待されること、政治家白石氏に期待することなどお話したいと存じます。  

年末年始、「坂の上の雲」をはじめとして様々な歴史、とりわけ戦争のドラマがあふれていました。  歴史の主役というと国家ないしは民族間の競争、即ち国家間の富と権力の分捕り合戦である「戦争」だったといって過言ではないでしょう。 そして第2次大戦後は経済が国際化、グローバル化する中で戦争は経済戦争という形にその姿を変えて今日に至っています。  日本は戦後の経済成長を経て丁度バブルの頃その戦争の覇者のようでありました。 しかしここ20年見事に坂道を転げ落ちてしまった感があります。 一方、3年少々前のリーマンショック以降の金融危機は、20世紀を象徴する大量生産、大量販売、大量消費を支えていた世界的な信用経済の収縮という、いわば現代社会の屋台骨を揺るがすできごととなりました。 また一方で、地球温暖化の危機、食糧危機、エネルギー危機、そして原発の問題など、20世紀型の産業が招いてしまった危機の連鎖を乗り越え、良好な地球環境との共存という意味で持続可能な21世紀型産業社会への道を切り拓かねばならないという人類史的課題が明らかになって参りました。 ここで明らかに世界が大きく変わりつつあります。 従っていわゆる国家間の「戦争」のあり方も今一度変わってきたことは間違いありません。  

かつて日本の経済規模は世界全体の2割近くを伺い、4割近くを占めた米国と合わせ日米で世界経済の過半を占めていたことがありました。 しかし今は昔。この20年近く日本が停滞している間に世界経済は2倍に拡大、中国など新興国は3倍ほども拡大。日本のシェアは8%程度を占めるだけで、この先10年、20年のうちには5,6%ほどになってしまいます。 ただ、これから更に少子高齢化を迎える日本と、昇り竜の如く人口と経済を拡大しているBRICSをはじめとする新興国との間で今後、このトレンドに抗って単純な規模を争うことは無意味であるように感じます。   それでは日本はただ競争に負けて衰退してしまうのかというと、そうはさせないと踏ん張るのが現代に生きる我々日本人の使命だと考えられます。  激動の時代はチャンスでもあります。 規模で競わなくても、その質と一人当たりの真の豊かさで勝てば良い、世界が羨む社会、あこがれる国を作れば良いという新しいタイプの戦いにおける戦略目標を作れば良いのです。   

坂本龍馬の時代から日本には売ったり使ったりする資源はありません。 でも一度は世界の頂点近くに立てたのは加工貿易やものづくりを中心とした経済で世界トップクラスの付加価値を生み出してきたからです。 世界に目を転じると、戦後日本の前に世界第2位の経済規模を誇ったドイツ、かつて7つの海を制覇、世界の陸地の何割かを治めた大英帝国。 彼らがその経済規模で日本に抜かれても、現代のドイツやイギリス、フランスなどはとても豊かな社会を維持発展させています。 それは様々な得意分野で彼らがしっかり付加価値を作りだすことができ、世界に誇るユニークな文化を保つことができているからです。 ドイツはそのこだわりぬいた物づくりで、そしてイギリスは金融を中心とした知的サービスなどで、フランスはそのセンスと洗練を活かした物づくりや文化発信などをもってです。 即ちどの国も国自体のブランド、世界中の人々に届き、感じられるユニークな付加価値をしっかり持っています。 それではそういった観点で日本ブランドはどうなったのでしょう。  一時はMade in Japanは高い品質と信頼性の代名詞、即ちブランドでした。 でも今は多くの欧州ブランドには世界の消費者からの憧れ度合いで水をあけられ、韓国、中国、その他アジア製品との差別化も非常に難しくなっているのが実情です。  

そこで、日本ブランド復興の方向性ですが、それは冒頭に述べましたが、 規格大量生産、大量販売の時代が終わり、次の時代の規範となる考え方、人間の生き方、社会のあり方を提案する人類史的課題にいの一番に応えていくことではないかと考えます。 これが圧倒的な差別化となります。 即ち日本が20世紀型の経済と社会を変革し、良好な地球環境との共存という意味で持続可能な産業社会を提案、作っていくことで再度日本が世界から尊敬され、喜んでその製品やサービスの対価としての富が日本に流れ込み、日本が豊かな社会を作っていけるチャンスが生まれます。  

<日本のブランドづくり> こうした課題に対する我々日本人のなすべき役割を整理してみますと。 1. 企業、事業主としてはしっかりした長期ヴィジョンのもと世界最先端の技術開発を進め、各々の得意技を磨き、持続可能な産業社会実現に向けて各自の分野で、ユニークでワクワクするような商品、サービスを創造していくといった、今までにないクリエイティブな努力する必要があります。  2. また行政、政治はこれをリードしサポートしていく先見性にもとづく政策立案と力強い実行力が求められます。 3. そしてこのように大きな人類史的課題に対して、日本の官民が一丸となって、日本の文化的、社会的伝統を踏まえた人間と産業との新しい関係を世界に向けて提案していくことです。 それは日本の歴史、日本の文化が得意としている、征服や挑戦という形よりも調和や共存といったあり方の追求であり、  異文化を取り入れ、自然に感謝し、同胞や先祖に感謝し、地域のコミュニティと相和す文化に基づく考え方そのものです。 すなわち人間と自然との調和、機械と自然との共存、社会と産業の共栄、といったような新しい産業文化のあり方の実践と発信です。  

そうした独自の文化的な提案が世界における日本の存在感を高め、地位を高め、数や規模といった観点からではない、世界からの尊敬をかちとっていくことにつながります。 やがて中国やインド、ロシア、ブラジルなどに規模の世界では抜かれていくであろうとも、日本は日本独自の考え方、文化的なパワーで世界をリードし、盛り立て、世界からの尊敬をかち得ていくことが、日本人が真に誇りを持てる今後の日本のあり方、生き様ではないでしょうか。 その結果、こうした文化、社会そのものが付加価値となって日本のブランド価値が大いに高まり、富が還流し、拡大し、日本が豊かな国であり続けることができるのです。  

私はこの講演を引き受けるにあたって白石先生にいくつか質問をしました。 それはこの国をどうしたいのか、その為にあなたは何をするのかということでした。 彼は、 1)日本を、黄金の国「ジパング」であり続けさせること。 2)それには地域密着、コミュニティーを活性化、和を図り、コミュニケーションの力をもって日本の産業、文化を支え発展させること。 3)そしてリスクを恐れず挑戦を楽しみたい、 と明快に応えられました。 まさに我が意を得たり。 日本を素晴らしい国、そして世界があこがれる国に導いていただきたい、と心底託す気持ちがこみ上げて参りました。 まずはこの文京の地を発進基地として、日本の目指す新しいブランド:「ジパング」作りのリーダーシップをとっていただくようお願いいたします。

私はここに若きリーダーの誕生を祝い、まずはここにお集まりの皆さん、文京区のコミュニティーの和と団結と後押しをもって、白石英行氏のさらなる大きな舞台での活躍を心から期待し、また祈念いたします。  

ご静聴ありがとうございました。  



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